事実ではなくフィクションの海外文学作品だが、まるでドキュメンタリー作品であるかのように人間の心理描写をよく観察し見事に捉えている作品。
そしてそれに対比して、美しい自然描写や目に浮かぶような風景、繊細できめ細やかな文体はさすがは文学作家という貫禄を見せつけている。
実話以上に実話風なリアルさに背筋がゾクゾクしつつ、美しい描写で癒やされるというなんとも言えない不思議な感覚。
内容自体はなんてことない。それがリアルに近づくとこんなにも面白くなるとは。
読者が若ければ、こういう人間もいるということを教えてくれ、30代であれば、励まされ、中高年であれば、本の面白さを味わうことができるだろう。
何度も読むたびに新たな発見がありそうな本だった。
海外小説は苦手だが、面白く一気に読んでしまった。